文部科学省は、保護者からの疑問が多い健康診断(健診)の児童生徒のプライバシー保護の在り方や教職員の負担軽減など、保健管理に関する現状と課題を検討する「学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会」(座長=髙田礼子・聖マリアンナ医科大学予防医学主任教授)の第1回検討会を5月19日に開催した。委員からは養護教諭や教員の負担軽減に向け、校務支援システムなどICT活用の意義について多くの意見が上がり、データ活用のためのシステム連携の重要性について共有した。
第1回検討会では各委員が考える保険管理の課題が述べられた
本検討会では①健診の検査項目の意義やプライバシーへの配慮などの実施方法、②保健管理に係る教職員の負担、③学校医の確保など、学校の保健管理に関する課題について現状を分析。本検討会は2028年3月31日まで設置して討議する。
肥満・痩身、生活習慣の乱れ、アレルギー疾患、メンタルヘルスの問題など児童生徒の心身の不調の出現は多様である。そうした背景にはいじめ、児童虐待、貧困など様々な問題が関わっており、個に応じた継続的な指導・支援の充実が求められている。児童生徒等の健診は毎年6月30日までに行われている。
養護教諭を養成する女子栄養大学栄養学部教授の遠藤伸子氏は「ICT活用により効率よく健康観察データを回収でき、心に問題を抱えた児童生徒の早期発見につながる。直接相談できない児童生徒が増えていることからICTの活用も求められる」と指摘。コロナ禍でICTを活用する学校が増えたが、現在では紙に書いて申告する方式に戻っている学校もあることを危惧した。
全国養護教諭連絡協議会会長の辻野智香氏は、1人1台端末で児童生徒の健康観察を行う学校が増え、「宿泊行事前の保健調査なども、携帯端末で集計して個別対応につなげる学校もある」など学校側の体制の変化を伝えた。
(公社)日本学校歯科医会専務理事の長沼善美氏は「学校のDX化を図り健診結果を素早く事後措置に結び付けることが理想。その仕組みを校務支援システムに取り入れることが健診の改善につながるのではないか。校務支援システムを活かした健診により、児童生徒が自分で健康管理できるようになると良い」と述べた。
(公社)日本医師会常任理事の渡辺弘司氏は「健診のデータを利活用して児童生徒のヘルスリテラシーを高める体制が求められる。クラウド型の校務支援システムにより医療データとの連携が行われれば養護教諭の負担も軽減し、個人のヘルスリテラシーも向上するのではないか」とした。
文科省が2022年度に実施した「教員勤務実態調査」では、前回調査(2016年度)と比較して教員の働き方改革が進んだこともありすべての職種において在校等時間が減少。
養護教諭等の業務支援に関する取組では他の教員に業務を分担することで養護教諭に負担が集中しないよう配慮するケースが見られた。
<リンク先>
「学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会」第1回目を開催
教育家庭新聞 教育マルチメディア 2025年6月16日号掲載