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図書館

【特別対談】好奇心や疑問が学びの出発点に~図書館を使った調べる学習コンクール 第30回記念

2026年5月7日
春の学校図書館特集2026

(右)文部科学省総合教育政策局長 塩見 みづ枝氏、(左) コンクール審査員長・新国立劇場運営財団理事長 銭谷 眞美氏

「図書館を使った調べる学習コンクール」(主催:公益財団法人図書館振興財団)が2026年度で第30回を迎える。年々応募作品数が増えている本コンクールの魅力や探究的な学びとの関係、公共図書館と学校図書館への期待について、文部科学省総合教育政策局長・塩見みづ枝氏と、コンクール審査員長を務める銭谷眞美氏(公益財団法人新国立劇場運営財団理事長/公益財団法人図書館振興財団理事)に話を聞いた。(進行=公益財団法人図書館振興財団理事 谷一文子)

 

「連携」し探究を支える場に、知識理解の先の総合力を

──本コンクールは1997年の第1回応募作品数925点から始まりました。そこから昨年度の第29回には12万点余り、教育委員会や公共図書館などが主催する地域コンクールも171開催となり、いずれも過去最多を更新しています。本コンクールが成長し続ける理由は何でしょう

銭谷 自分の疑問や好奇心、想いを大切にして、色々なことについて調べる学習に取り組むことがコンクール開催当初からの大きな特徴であり、子供も大人も非常に自由な発想で挑戦し研究するものであることが、多くの方の支持を集めているようです。

また現在、探究的な学びが教育の中で重視されるようになったことも要因だと思います。

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塩見 学校での探究的な学びが今ほど一般的になる前から本コンクールが開催されていたという、その先見性に時代が追い付き、毎年応募数が増えるという形で反映されたのではと感じました。

今回の入賞作品をじっくり拝見して本当に驚きました。自分が興味をもったことを出発点に、図書館をまさに使い倒し、周りの大人もしっかり使って、色々な手段で自分が面白いと思ったことに迫っていく様子が本当に素晴らしく、読み始めると引き込まれ、最後までぐいぐい読んでしまう。作者の方の情熱や熱量がそうさせるのでしょう。

銭谷 作品のタイトルにも非常に面白いものがたくさんあり、受賞作品はそれを見ただけで読んでみたくなるものばかりです。調べる楽しさや発信したい想いが伝わってくるからでしょう。

【特別対談】好奇心や疑問が学びの出発点に~図書館を使った調べる学習コンクール 第30回記念

 

──開催当初から現在まで、応募作品に変化はありますか

銭谷 図書館を使う・調べる、という要素と、作者の自発性や主体性を大切にしている点は当初から変わりませんが、調べる手法は年を経るごとに非常に幅広になっていきました。インターネットを活用したり、現地に行ったり、関係者の方にインタビューするといったように発展し、多様かつ丁寧になっていったのです。それによって深まりも出てきました。最近では一つのテーマを継続的に追いかけて毎年のようにコンクールに応募する、あるいはテーマを発展させてさらに関連する事柄に取り組むといった広がりも見られます。

塩見 作品に取り組むことが、作者自身の成長をも促していると感じました。例えば昨年度の小学生の部(中学年)で文部科学大臣賞を受賞した『コウモリはこわくない‼~コウモリをすきになってもらうには~』<袖ケ浦市立昭和小学校4年生(当時)・蒔田侑佳さんの作品>では、コウモリの良さを他の人に分かって欲しくて、本当は人見知りだけれども、調べたい一心でインタビューに挑戦したりしています。自分の”好き”を追いかけることで、自分自身の成長も引っ張られていくことを、作品を通して目の当たりにしました。

銭谷 そこで思い起こすのは、かつて私が文化庁に勤務していた頃、長官でいらした臨床心理学者の河合隼雄先生の言葉です。先生が学びに大事なこととしてよくお話されていたのは第一に「自分の興味関心があることを学ぶこと」でした。それから2つ目は「先生に師事して学ぶこと」、3つ目は意外かもしれませんが「仲間と一緒に学ぶこと」です。

本コンクールになぞらえて考えてみると、2つ目については指導される先生や保護者のコーチングが当てはまります。3つ目については、必ずしも共同作業とは限らなくても、図書館に行くと自分と同じように色々と調べている人がいますし、司書の方が相談に乗ってくれます。

【特別対談】好奇心や疑問が学びの出発点に~図書館を使った調べる学習コンクール 第30回記念

読み応えのある受賞作品の数々。手書きの作品も多い

 

──生涯学習という観点からはいかがですか

塩見 河合先生が仰った学びの本質は、現在私が携わっている生涯学習や社会教育にも重なっていると思います。

自分の中で学びたいことがあり、同時に仲間と一緒に学ぶことで、その相互作用から自分の考えが広がったり、新しい発見があったりします。

また、仲間と一緒に取り組むことで、楽しみながら、長く学び続けることにもつながっていくと思います。

大人の応募作品の中には、地域の課題に関心が向けられたものもあります。このような学びと、生涯学習や社会教育がつながっていき、ゆくゆくは地域の住みやすさや一人一人のウェルビーイングにもつながっていく。そうした広がりへの可能性も感じました。

銭谷 探究的な学びは、かつては主に学校の文化部の活動として行われていました。例えば社会部で地域研究をしたり、科学部で実験や自然観察をするといったことです。それを学校の授業や個々人の生涯学習の一環として、誰もが取り組むようになったというのは良いことですよね。

 

──教育現場でのICTの活用や、AIの普及といった変化の中、改めて図書館を使うことの意義とは

塩見 文部科学省では2024年から「図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議」で検討を重ね、今年3月17日に「図書館が拓く未来の学びと地域社会」(報告書)を公表したところです。有識者会議は公共図書館と学校図書館の関係者が、初めて一緒に検討する会議となりました。

報告書では、公共図書館は「読む」「集う」「学ぶ」ことによる新たな「地域共創」の場として地域のみんなにとって居心地の良いスペースになるよう、また学校図書館は「学びの深化を担い、一人一人の『好き』を育み『得意』を伸ばす居心地の良い学校の『中心』へ」として、それを支える上で大切な読書・学習・情報の3センターの機能が充実して欲しい、と提言しています。

AIの時代になり、人間の働き方や学び方は大きく変わっていきます。AIを主体的に使って生きていける人間として育っていくためにも、図書館を使った学びは一層重要になると思います。

本コンクール作品であれば、単に調べるだけではなく、調べたことをつなげたり、試行錯誤したりしながら、一つの結論に向かって考えを深めてまとめ、相手に伝わるような形で仕上げていく作業があります。このようにAIの回答や結果にすべてを頼るのではなく、一人一人が自分の力で時間をかけながら様々なプロセスを踏んで学んだり調べたりして、それが本当に正しいことなのか考え、さらにまとめたことを自分の言葉で相手に伝えていく過程が一層大切になると思います。

銭谷 それはとても大事なことで、学校教育法第三十条二項にも、生涯にわたって学習する基盤を培うために「基礎的な知識及び技能」の習得と、これらを活用して課題解決をするために必要な「思考力、判断力、表現力」を育み、「主体的に学習に取り組む態度を養う」ことを示しています。図書館で学ぶということは、そういったところまで応援してくれるのだと思います。

知識理解だけであれば、講義式の授業の方が効率が良いのです。しかし今後生成AIの時代になっていくなかで、より子供の個性や創造性を育む教育が大事になってきますし、そのためには知識理解の先にある、子供にとって知的な総合力が身につく学び方について考えなければいけないのではないでしょうか。

そこで、知識理解という観点からみると効率は悪いかもしれませんが、探究的な学びや、調べる学習を学校の教育の中でも取り入れていく必要があるのだと思います。

 

──報告書を受けて、これからの公共図書館や学校図書館はどのようになっていくのでしょうか

塩見 探究的な学びを重視した新しいこれからの学びにとって図書館が果たす役割は大きく、特に学校においては、すべての先生方にぜひ学校図書館を有効に使って頂きたいと思います。また、こうした学びを支える存在になるために、公共図書館と学校図書館が連携し合いながら取り組んでいくこともとても大事だと思います。

今後、少子化も進んでいくなか、それぞれの図書館が自館のみですべてを解決することは難しくなることが予想され、上手に補い合うことが必要となってきます。提言ではさらに書店や出版社といった読書を取り巻く関係の方々との連携も掲げています。

また今回の会議では、アクセシブルな環境づくり、ということも大きなポイントの一つです。読書に対してさまざまなバリアを感じておられる方々の環境をもっと改善し、図書館を誰にでも開かれたものにしていく。

図書館の良さは、子供からお年寄りまでみんなが楽しく、勉強や読書などそれぞれ思い思いに過ごせることです。最近は子供たちが自由に寝そべったりできるスペースもあったりします。図書館が学びの拠点としてはもちろんのこと、居心地の良い地域の中核拠点として、人と人をつなげ、地域を元気にする存在としても発展できるよう、文部科学省としても支援に取り組んでいきたいと思います。

銭谷 以前と比べて、今は公共図書館も学校図書館も充実してきていると思います。都道府県立の図書館と市町村立の図書館はそれぞれの機能や役割の分担、ネットワーク化が進んでいます。今後は市町村の図書館や市の分館がもっと増えて、徒歩や自転車で行けるところに図書館がたくさんあると良いですよね。

近年、住宅事情などから本が沢山ある家庭が減り、書店も減っています。子供が本に接する場所という意味で、家庭や書店、公共図書館や学校図書館の存在が重要です。

また報告書にあるように、司書の方が活躍できる体制も作って頂きたいですし、学校司書の配置もまだ足りていません。学校図書館は子供にとって楽しみな場所でもありますし、子供の頃に本に接する習慣をつけるためにもとても大事です。図書整備事業もありますから、これをしっかり活用し蔵書もより一層充実させて欲しいと思います。

図書館は知の宝庫です。公共図書館や学校図書館といった知の集合体で、そこにある書を読んだり調べたりすることは、非常に知的な刺激を受けますし、子供にとっても大人にとっても、精神的な成長のためにとても大切な場所だと思います。

特別対談】好奇心や疑問が学びの出発点に~図書館を使った調べる学習コンクール 第30回記念

右から、塩見氏、銭谷氏、谷一文子氏

※本編後半では、受賞者紹介として 第25回コンクールで文部科学大臣表彰(作品名『ヤマイヌ~私か解明したい謎のニホンオオカミ~』)を受賞した小森日菜子さんのインタビューを掲載しています。

受賞者インタビュー 記事リンク

第29回入賞作品

文部科学大臣賞 小学生の部(低学年) 弓田 新さん(東京都足立区立江北小学校1年生 当時)

文部科学大臣賞 小学生の部(低学年)

弓田 新さん

東京都足立区立江北小学校1年生(当時)

なぜ富士山は青いのか。アンケートで富士山の色のイメージを調べ、実際に海の水の色を確かめ、景色を観察し、本で太陽の光と空気の関係を調べた。

 

文部科学大臣賞 高校生の部 海老江 栞音さん 東京都立桜修館中等教育学校5年生(当時)

文部科学大臣賞 高校生の部

海老江 栞音さん

東京都立桜修館中等教育学校5年生(当時)

岡本太郎の《生命の樹》にはなぜか現代人の姿がない。作品には核問題を抱える現代社会にも強く響くメッセージが込められていることに気づく。

 

「2030生物多様性枠組実現日本会議」賞 小学生の部(高学年) 三浦 伊リアさん 東京都新宿区立東戸山小学校5年生(当時)

「2030生物多様性枠組実現日本会議」賞 小学生の部(高学年)

三浦 伊リアさん

東京都新宿区立東戸山小学校5年生(当時)

美味しいみかんはどうやって作られる?柑橘の産地大分と愛媛、有田、三ケ日を走るように旅した私の物語。

 

 

画像提供:図書館振興財団

※その他の入賞作品も公式サイトで公開中

 

 

春の学校図書館特集2026

教育家庭新聞 教育マルチメディア 2026年4月27日号掲載

 

 

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